2021年10月18日月曜日

 もう、ずいぶんと昔のことだけど、僕は、仕事で放射線管理区域に入るために、
放射線従事者の講習を受けたことがある。
この時に、受けた印象は今でも鮮烈に覚えている。

講師の先生は、元/原発関連の会社の職員だったり、元/研究員だったりするのだが、その講師らが言うには、放射線は安全です、というのだ。
なぜなら、例えば、α線は、紙一枚で防ぐことができるのですから、というのだ。
で、ベータ線は、アルミ箔で、ガンマ線は鉛の板で防ぐことができる
だから、安全です と。
なんなら、皆さん、レントゲンを受けてますよね?検診で
あれも放射線ですよ、太陽も放射線、放射線は身近にあるんです。

なるほど、そういう言い方があるのか、と感心したものだ。
そうまでしないと防ぐことが出来ない、もし、防げなかったら、どういうことが起きるのか?という点をほとんど省いて説明するのだから、今にして思えば悪質だ。
レントゲンだって、わざわざ浴びない方がいいのはわかっていると思うのだが。

太陽と放射線を同時に論じるには、科学として伝えることと、
安全教育として伝えることは違うのだが、それをわかっていない。

もっとも、受講している生徒たちの態度も悪かった。
僕などは、真面目に、心の中でツッコミを入れながら、聞いていたが、金髪のピアスをつけた彼などは、居眠りをしている。最初から聞く気が無いのだ。
一時的に工事などで立ち入る必要がある人も、いやいやその講習を聞くことになるので、
この講習に参加している人は多様だ。

放射線を浴びて、遺伝子が傷つくこと、修復不可能なこと、様々な疾患への進展など、
放射線被ばくした場合の恐ろしさは、がんの放射線治療のことなども知っていたから、
まぁ、そりゃそうだよな、と思いつつ、
さらに、内部被曝など しようものなら、大変な訳だが、
居眠りをしているピアスは、内部被曝と外部被曝の違いとそのダメージについて
興味もないわけだ。


本来、高濃度汚染物質や放射線物質を扱う時は、ガスマスクもゴーグルも必須な訳だが、当時、動燃の火災やJCOのバケツ事件など以降にようやく、現場に入る際には、それらを携行するようになったという何ともお粗末な時代だった。
作業服だって、綿100%のつなぎ服で、穴の空いたボロボロの洗い再生したものを着ていたし。

今考えても恐ろしい、内部被曝をしそうなシチュエーションはいくつもあった。
あのJCOの被ばく事故くらいを境に、幸いにして、放射線管理/従事者としてそれらの施設に入ることはなくなったが、正しい知識や科学的な常識などにおいても、言い方ひとつで、何ぼでもニュアンスが変わることを思い知った。

そして、僕も年を取り、世の中には、悪人がいるということ
詐欺師がいるということも知った。

さて、
●現在までのところ、この物質は、
  君の人体にとって悪い作用が生じるという報告はされていない。
とか
●この物質は、君に人体にとって高い有効性が示されているとう報告もある。
  (海外論文A 論文B)
とか
この文章を見て、普通の人はどう思うのだろうか?
ほとんどの人は、ああそうなのね、としか思わないだろう。でも
僕はひねくれてしまった。
こういう役人型の文章の引っかかりポイントを見逃すことができない性質なのだ。
上記の文章は、
将来悪い作用が生じるかもね、
有効性が示さないという報告もあるかもしれない、
ということを示唆している。
いや、示唆どころから、実際そうだとしても、こういう書き方ができるだろう。

それが、常識なのだよ。
でも、世間はそうは思っていない。まぁ、しょうがない。
自分の頭で考える人が少しもで増えてくれることを祈り、こんな文章をアップする次第。

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